8月24日(土)、
秋の気配漂う
阿蘇市一の宮のCafe et brocante Tien Tienで行われた
「小林モー子さんトークショー」のお手伝いをさせていただきました。
23日〜25日に同店で開催された「メゾン・デ・ペルルの世界展」のため
来熊したモー子さん。
モー子さんワールド全開の店内は、
Tien Tienさんとmaison des perlesさんの世界がステキに溶け合って
独特の世界観を創り上げていました。
話が聞けなかったという人のためにも、以下、
オーナーの真由美さんも参加しての、
楽しいトークショーの内容をここでご紹介させていただきます?
(以下、真由美&モー子で表記)
―熊本は何回目ですか? 熊本の印象も教えてください。
モー子 9回目になります。パリに住んでいて、その後日本に帰ってきて1年後くらいに真由美さんが阿蘇にお店を出した時に来て以来です。熊本はおしゃれな人がすごい多いと思います。人柄も優しいし、方言が面白い。最近はトラディショナルな方言も分かるようになってきました(笑)。
―最近、力士の化粧まわしを作られたと聞きました。
モー子 安美錦関です。青森出身の方で。化粧まわしは、もともと私がずーっとやりたいなと思っていて、日本刺しゅうの代わりにビーズでぎっしりギラギラしたのを作ったらどうなるんだろうという感じで、雑誌のインタビューとかでも言ってたんです。そうしたら話が来て、やることになりました。実際は、思ったほど大きくなかったです。ただ引退されるということで、1週間くらいしか制作時間がなかったです。
―デザインはどうやって考えたんですか?
モー子 化粧まわしは企業の広告なので、本当はマークを入れたりするんですけど、今回は何でもいいよと言われたので「逆に困る」(笑)みたいな。安美錦関の名前が故郷に錦を飾るという意味があると聞いたので、「青森とは?」と考えて。リンゴだけ刺しゅうするわけにはいかないし、みんなが知ってる「ねぶた」。あと、ご両親が鮭漁をされているそうなので鮭をモチーフにしたり、青森県の模様を入れたりして1週間で作りました。
―モー子さんの技術を支えているのが「オートクチュール刺しゅう」ですが、どんなものか教えていただけますか?
モー子 もともとは、フランスやヨーロッパでオートクチュールというものがあって、それに職人さんが洋服に装飾をほどこしていたんです。その刺しゅうや装飾が華やかになったきっかけが、かぎ針です。かぎ針を発明した女性がいて、そのかぎ針ができたことで、速く正確に刺しゅうができるようになりました。そのうち、シャネルやディオールなどのメゾンも刺しゅうを使うようになって。現在、ふだんからオートクチュールを頼む人は世界に300人くらいしかいないんです。飛行機で行って、仮縫いをしてという世界なので、1,000万、2,000万するようなドレスを作っています。
ーへー、すごいですね。
モー子 そういう技術はすごいなと思ったけど、そんなの頼めないじゃないですか。オートクチュール刺しゅうの技術を使って、今の人たちがもっと気軽に楽しめるようなものは何だろうと考えて、今の作品が生まれたんです。
でもはじめは、刺しゅうで絵画のようなものを作っていたんですよ。そこから、もっと掘り下げていきました。私にとっては、絵をそのまま胸につけるみたいな感覚なんです。
―絵と一緒にお出かけできる感じですね。
モー子 そうですね。
―そもそもオートクチュール刺しゅうを学ぼうと思ったきっかけは?
モー子 もともとすごい手芸が好きで、小さい頃から手芸をやっていて、手芸の先生の免許とかも持っていたんです。渋谷の文化村で、初めてメゾンのオートクチュールの刺しゅうを初めて見て、「これどうやってるんだろう!?」と、知りたいと思ったのがきっかけです。そこからパタンナーをやりながらお金を貯めて、26歳の時にパリに勉強に行きました。
―パリの修業時代のエピソードはありますか?
モー子 その頃は、職人さんが上のフロアから降りてきて、ちょっと教えてまたいなくなったり。留学生としてビザが下りるには、週に5日間20時間くらい学校にいないといけない。毎日すごい宿題も出るので、寝る時間もないくらい刺しゅうと向き合っていました。でも、楽しかったです。ひたすら刺しゅうをする時間ができたのは、すごい良かったなーと思います。
―昨年秋に放送されたNHK番組「世界はほしいモノであふれてる」でも紹介されていましたが、材料にビンテージのガラスビーズを使っているのはどうしてですか?
モー子 テレビに映っていたのはほんの一部で、もっと巨大倉庫とかがあって、出せないところもあったんですよ。パリに行くとずーっと地下のほこり臭いとことにいる感じです。ホント、宝探しのような感じで。
ビンテージのビーズの良さって、昔の技術だとガラスの中に気泡とか不純物とかが入っているので、ちょっとふわっとした色あいになっていたり、粒が揃っていないところとか、今のビーズに比べると光り方もぜんぜん違うのが魅力なんです。この刺しゅうはピクセルなので、小さいビーズがあればあるほど、細かい表現ができるんです。
―ビンテージビーズを探すのは難しくなっているんですか?
モー子 だいたい出つくしている部分もあるので、思っているような色のビーズが出てこなかったり。欲しいビーズはないけど、いらないビーズは50kgあるとか。売ってる側も、ビンテージとして扱ってすごい高く売っている人とか、倉庫でざっくり「いいよ。いくらで」みたいな人もいる。値段もバラバラだけど、欲しいのはやはりいいビーズが多いです。
―作品づくりはまずデザインから入るんですか?
モー子 そうです。箱のサイズがあるので、まず箱のサイズを考えながら、メモ帳に書くところから始まります(笑)。大きくなったら、箱も新しく作らないといけないので。
―モー子さんの作品は、今にも動き出しそうなデザインが魅力ですよね。
モー子 実は、最初の頃は全く何も考えていなかったんです。最初に作ったのが、今も作ってる「足がぶらぶらしているおばけ」と「シャンパン」と「稲妻から稲光が出ている」ブローチです。そこからちょこちょこ増えていって。ある時、「動きの瞬間を捉えているものが多いなー。ミルクが垂れていたり」と自分で後から発見して、「あ、それで行こう!」みたいな(笑)。
―製作の上でのご苦労はありますか?
モー子 「メゾン・デ・ペルル」では、ビーズを買い付けてきて、デザイン、制作して、加工、販売まですべて自分たちでやっています。始めは、1つ作ってみて、ここはああしようとかこうしようとか考えていくんですが、ビーズってサイズも違うので実際に刺してみると違うなということもあるし、色も入れ替えたりしてみて完成させていきます。
オートクチュールになると4〜5mの刺しゅう枠があって、それに向かい合って数人で刺しゅうをするのですが、私たちはもう少し小さな枠を使って、ひたすら刺すという作業をします。何人かで作っているので、その中で差が出ないようにしています。1人は3時間かかって、もう1人が10時間だと困るので。時間も質も揃うように、みんなで考えながらやっています。
こういうデザインを作りたいけど、強度が難しいということもあります。フラミンゴの足が折れそうだからぶらぶらさせようとか、タコの足8本は絶対取れそうという時は上手にくっつけてデザインしたり、難しいことでもみんなが提案し合って、どんどん進化しています。強度にも気を遣うようにします。お客さまの中には、3回くらい洗濯機に入れたけど、平気でしたという人も(笑)。それは止めてほしいですけど・・。
―みなさん、気を付けましょう(笑)。
モー子 うちでは30年代から50年代を中心に使っていて、中には年代が分からないものもあります。100年近いものも混ざっていたりします。ガラスビーズは変化しないので年代を経ても、色が変わらないんです。ただしビーズによって制作方法が変わっていて、ピンクは色が出にくいそうです。温度や熱の具合で色が出るので、なかなかない。染めビーズだと、ちょっと色が変化したりしますね。
ー年代を経た貴重なビーズを現代に蘇らせているのが、モー子さんの作品なんですね。
―真由美さんとの出会いについて教えてください。
モー子 パリに26歳の時に行ったんですけど、語学がぜんぜんできなくて、語学学校に登録したんです。でもその頃のアパレルって夜中の2時、3時まで仕事をして、月に2日くらい休みがあるような勢いで忙しくて。その語学学校の1日目か2日目に会ったのが真由美さん。その後は一緒にサボりまくって、ぜんぜん学校に行かなかったです(笑)。
真由美 彼女とは飲んでるところしか、ほんとに思い出がなくて(笑)。もう知り合って10年近くになるんですけど、ほんとに変わらない方で、いつも楽しくて。素晴らしい友人に出会えたなといつも思っています。
小林モー子さん プロフィール
刺しゅう作家。1977年神奈川県茅ヶ崎市生まれ。文化服装学園アパレル技術科を卒業後、27歳でパリに渡り、オートクチュール刺しゅうの技術を学ぶ。2010年に帰国し、maison des perles を設立。刺しゅうアクセサリーの制作と同時に、オートクチュール刺しゅう教室も開始。2017年にはユニクロの難民支援のオリジナルチャームをデザインするなど、有名ブランドやデパートなどからもひっぱりだこ。
maison des perles ウェブサイトはこちら
↓↓
http://www.maisondesperles.com
「モー子さんトークショーをしましょうよ!」と真由美さんと盛り上がって以来、ずっとずっと楽しみだった今回のイベント。私は、真由美さんとモー子さんが創り上げられた世界に乗っからせていただいただけなんですが、結果、たくさんのみなさんに、改めてモー子さんや作品の魅力をご紹介できて、とても幸せでした。想像した以上にきさくて、魅力的なモー子さん。これからもステキなアクセサリーで世界を感動させてください!」
2019.8.29 |
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